TSD感想

このページには番外編「The Seventh Dowarf」のネタバレが含まれています。
未読の方はご注意下さい。
The Artemis Fowl Files (Artemis Fowl)
※ 「The Seventh Dowarf(7番目のドワーフ)」は
  データ・ブック「The Artemis Fowl Files」に収録されています。

みどころその1 : マルチにやさしいアルテミス!

マルチに対するアーチーのやさしさにはホントびっくりします。
普段はどんな相手にもいけしゃあしゃあと腹黒テクを駆使するアーチーですが
マルチに対しては妙にやさしい。とてもやさしい。

むしろバールネタを持ち出す勢いのバトラーさんの方が物騒だ。

一番のみどころはやっぱりアルテミスとマルチのコンビネーション!
取引の内容についても、勝手にもっと腹黒いものだと思っていたのですが
読み返してみると案外フェア。

マルチにはどうしてこんなにもやさしいのか、アーチー。
なんなの。
なんのやさしさですかアーチー。
なんのためのやさしさですかそれはアーチーっ!!

…と、思ったけれど
考えてみればアーチーってば取引に関しては相手が誰でも
案外フェアな条件を提示するタイプなのですね。
1巻のラストにおけるホリーさんとの交換条件とか
2巻におけるLEPとの交換条件とか
3巻ではスパロウとの…まあ、あれはあれでフェアと言えなくもない。

アルテミスは悪い子だけど、取引のみに関して言えば(一応)フェアな人物なのだと再認識。
(誘拐事件のときのLEPに対する要求はひどいけどさ。
 ひどいなりに条件の提示はきっちりしていたような…いや、やっぱりひどいな。

まあ、それを差し引いてもマルチにはやさしい。
お気に入りちっくというか…。

みどころその2 : ホリーさんのサービスショット!

オフ日のホリーさん!なんてレアな。
このシリーズ、全編を通してアーティVSホリーさんの関係は常に変化を続けています。
決して「仲良し」にはならないけれど、反目しあう仲から、認め合う仲に。
そして再び敵対したり、相手のことが理解できずに怒ってみたり。
おたがいの感情の変化はシリーズを通しての楽しみでもあります。
TSDはちょうど1巻と2巻の間を舞台にしているので
ホリーさんはアーチーを「誘拐犯!」と思ってて
アーチーはホリーさんを「例の妖精」(痛い目にあわされた…でも感謝)と思ってる。
縁はあっても、絆はない。縁は縁でもくされ縁(のはじまり)憎しみだけではないけれど
それが好意に発展することはなく、相手に対する多少の理解を得ているだけの状態。

北極ではアーティに対して思いっきり
復讐の女神と化していたホリーさんですが(ヒロインなのに…)
TSDの時点では誘拐のトラウマはしっかり残っていて、仕返しは少しもできていない状態です。
アルテミスはアルテミスで、多少の罪悪感を持っていながらも
相変わらず「食い物」であることに変わりはなく
例の事件から多少の感情を持ちえる対象となった相手という認識。
いや、つまりはホリーさんはストレスフルな生活+アルテミス・ファウルに関する悩みを持っていて
微妙な感情にイライラしていたというこの状況。
そして、仕事と事件のストレスに苛まれたのちにようやく取れた休暇。
シリーズを通してもホリーさんの休暇の描写は…レアです!
ホントにレアです。皆さま要チェック!

そして意外にもサービスシーンたっぷりです!
(誰に対するサービスシーン?)
なぜなら、休暇先がスパ!スパといえば温泉!サウナ!エステ!柔肌!
(…今、なんつった)
エステの描写なんかがサービスかと言われればそれはそれで微妙なのですが…
まあ、それ以外はちょっとした読者向けのサービス。なのかな。

ホリーさん@スパ。
サービスシーンだと言い張ります。
…たとえピーリング描写がちょっぴりトラウマちっくに衝撃的でも。

繰り返します、このサービスは要チェックです。

みどころその3:アーティとアンジェリーンの関係

なんとなくファンフィクを読みすぎて(笑)結構アーティと家族の絡みがあったような気になってましたが
実際はこれまでのファウル家の描写って少ないのです。
精々、2巻でアンジェリーンがアーティの学校へ働きかけている描写と
3巻でティミーがアーティの日記に登場するくらいで…考えてみればどれも直接的な描写はない。
ほとんどの描写は間接的なものばかりなのです。
そんな中、TSDにおけるアンジェリーンの登場にはびっくり。
そしてアーティに対するアンジェリーンの行動には、さらにびっくり。

1巻が発売された時点では「アルテミスの本心」は読者に提示されませんでした。
母親に対するあの行為も実のところ本当に愛情から生まれたものだったのか
それともあくまで自分のためだけに行われたものだったのか、
冒頭の調書なども目くらましの機能を果たしており、読者側はアルテミスの本心を知ることはできませんでした。

2巻・3巻の後にこのTSDは発表されました。
(おそらく執筆の順番も1>2>3>TSD>TAFF>4)
1巻では本心を見せることのなかった
2巻では「意外な方向」に進み、成長した
3巻では「約束」だけを残して退場した、アルテミス・ファウル。

アルテミスは常に読者に見せていない多くの側面を抱えています。

だからこそこのTSDでのこの行動はものすっごい衝撃でした。

アルテミス・ファウルという作品
作中でアーティが妖精+悪人+ふたりのバトラー以外の人物と絡むシーンって少ないのですよ。
例外は2巻のドクターくらいかな。
3巻では色々登場するけれど。やっぱり大多数が悪人だし。
さらに言えば『アルテミスの視点で』他人と関わっている描写はドクターとだけかも。
あとはこのアンジェリーンとの会話…。
家族との絡みもレア、マットウな人間との絡みもレア。
うわー。それでいいのか主人公!?

いや、今後アルテミスが妖精と悪人とバトラー以外の「他人」とどんな風に関わるのか
すごく楽しみにしている要素のひとつです。

今後アーティがクラスメイトと会話してるシーンなんて登場するのでしょうか?
相当、衝撃的かも。

(あ、そうだ。ドクター以外にも例外がいた!
 …3巻に登場するウエイトレス。笑。
 いや彼女もアルテミス視点では描写されなかったか…)

とにかくTSDのテーマでもあるアーティとアンジェリーンの会話
最高のシーンです。

このシーンのためにこのストーリーがあった!って感じ。

オーエンさんは『他者との関係=成長』の描写が本当に上手い!


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